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能登地震

2024.4.27

令和6年能登半島地震災害支援基金「緊急助成オンライン報告会」レポート 【前編】


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1月1日に能登半島を中心に発生した地震を受け、ほくりくみらい基金では1月2日より「令和6年能登半島地震災害支援基金」を立ち上げました。

みなさまからお寄せいただいた寄付をもとに緊急助成を行い、3月末までに、44事業に対し総額774万円を助成しました。

震災発生から3ヶ月を前にした3月25日、ほくりくみらい基金の緊急助成に採択された団体等、5団体をお呼びし、オンラインにて報告会を行いました。

採択団体4団体と、ほくりくみらい基金から委託をさせていただいているお一人がこれまでの活動について報告。それを受けて、ほくりくみらい基金のスタッフを交え「いま感じている課題」「これからのニーズ」についてクロストークを行いました。

本レポートでは、前編の各団体の報告パートと後編のクロストークパートに分けてお伝えします。

(本レポートは、2024年3月25日現在の情報を基に作成しています)

●饅頭VERY MUCH【石川県かほく市での物資支援拠点から、七尾市、能登町、穴水町、珠洲市の避難所への支援物資運搬事業】(能登とととプロジェクト)

第1次で助成した饅頭VERY MUCHさんは、これまでの災害の経験から「物資と情報が枯渇してしまうことが真っ先に予想された」と話しました。

普段から運用しているInstagramを活用して支援物資の提供を呼びかけたところ、またたく間に拡散され総インプレッション数は4万件に。
かほく市に構える20畳あまりの事務所スペースが2時間あまりでいっぱいになってしまい途方に暮れていたところ、近隣のレンタルスペースが場所を貸してくれることになり、そこを物資支援拠点として震災が起きた翌日の1月2日から8日にかけて、七尾市、能登町、穴水町、珠洲市の避難所に向けて支援物資の提供を行いました

情報収集や、物資の仕分け、運搬などの活動もこちらもInstagramで募った即席のボランティアチームで行ったそうですが、過去に災害支援活動を経験した際の知見が活かされたそうです。

<饅頭>「支援物資を仕分けた段ボールには、その全面に何が入っているか書いた紙を貼り付けることを徹底しました過去の災害支援活動で、被災地では次々と届く物資の仕分けにかなりの労力を要することが分かっていたからです。現地での負担を減らすために、こちらでひと手間をかけて準備しました」

かほく市の拠点に物資を取りに来られた人に聞いた、”通れる道の情報”を壁に貼った地図に記載。能登の地理に詳しくないメンバーも多い中、アナログですが、誰でもわかる地図にしたことで情報共有が進んだそうです。

金沢方面と能登方面のちょうど真ん中に位置するかほく市の地の利を活かし、能登へ向かう被災者ご本人やご親族に受け渡しする形で支援物資を配布しながら、支援の依頼があった避難所や施設へ直接運搬することもあったと言います。

<饅頭>「とある避難所では、底冷えして寒い体育館で避難生活をしているにも関わらず、暖房の燃料となる灯油の支援が届いていませんでした。いつ暖が取れなくなるかわからない中、私たちに連絡してくれました。灯油を送るよと伝えると、電話口で泣いておられました。本当に不安だったと思います。」

ほくりくみらい基金からの助成は、必要な支援物資や燃料の購入費として使っていただきました。

県内、富山、長野から集ってきてくれたボランティアメンバーに最新の必要物資の情報を共有している様子

饅頭VERY MUCHさんは現在も、春物の衣類等の物資支援や炊き出し、コンサートの開催などを継続して行っておられます。
各市町の避難所にはまだ多くの方が避難しておられ、物資を届けるのに労力や資金がかかり続けている状況のなか、資金集めには苦労していると話されました。

足を運ぶ都度復興への険しい道のりを感じながらも、自分たちができることをできる限り行っていきたい」と話し、締めくくりました。

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▽饅頭VERY MUCHさんのInstagram https://www.instagram.com/manjyuverymuch/
 能登とととプロジェクトのInstagram https://www.instagram.com/noto_tototo_project/

●にじのわ ママと子どもの育ちラボ 【被災者向け育児用品配布会】

にじのわ ママと子どもの育ちラボさんは、実は事業採択後に事業計画を大きく変更された経緯があります。

<にじのわ ママと子どもの育ちラボ 森田さん(以下、森田)> 「私たちは普段、赤ちゃんや子どもの発達や、お母さんの育児のお悩みサポートをしており、人的支援を得意としています。申請当初も普段私達が行っていることに近い人的支援(子どもの一時預かり、育児サポート)を予定していました。ですが被災地に足を運び、他の支援団体さんと情報交換をする中、まだその段階ではないことがわかってきました。緊急時の今必要なのは『安全と生命維持』を支援することなんだなと

団体内での検討、見直しの結果、ほくりくみらい基金には事業計画変更を提出。代わりに実施したのは「被災者の方向けの育児用品配布会」でした。

<森田>「能登で被災した店舗から、『濡れたり、埃を被ってしまったりで販売できなくなってしまった商品のうち、まだ使えるものを支援品として活用してほしい』とご依頼がありました。被災して金沢に避難された方の中には子育て世帯も多い一方、育児用品の支援物資は限られていると聞いていたので、ほくみさんの助成もここで使わせていただくのが良いなと考え、変更願いを出しました」

当日は、ベビーフードや飲料、肌着や衣類、スキンケア用品、チャイルドシートなどを金沢市の泉小学校で配布。合計118組のご家族に支援品としてお渡しされました。

<森田>「店舗からいただいた商品が4トントラック1台分になったので、一時的に受け入れる場所として金沢市さん、配布場所として金沢市立泉小学校育友会さんにご協力をいただきました。当日の配布会にも、様々なつながりから40名のボランティアにご協力いただき、1日で配布しきることができました」

配布会当日の様子

様々な人・団体を巻き込み、力を借りながら実施した配布会。
参加された方からは、「避難するときに十分な量の子ども用品を持って来れなかったり、地震で破損してしまった物も多く、いただけてとても助かった」と、感謝の声が多数聞かれたそうです。

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▽にじのわ ママと子どもの育ちラボさんのInstagram https://www.instagram.com/nijinowa_salon/

●竹下あづささん

続いてお話しくださったのは、珠洲市在住の竹下あづささん。竹下さんは今回の緊急助成の採択団体ではありませんが、ほくりくみらい基金が被災現地や広域避難されている方々の状況をより詳しく知るため、珠洲市に居住し、個人でも支援活動道をされている竹下さんに情報提供を依頼しています。

1月1日にご自身も珠洲で被災され、何かできることをとすぐに活動を開始されました。

<竹下>「はじめは県外から来てくださったボランティアさんをお手伝いするような形で、土地勘がないと行けないような避難所を回り、物資の配布を行いました。その後、珠洲市の約3分の2の方が金沢市や加賀市に避難されましたがそちらのフォローが手薄だと気が付きました。今は週に1度珠洲から加賀に通い、避難された方が集う場の提供や悩み相談、物資の提供などを続けています

珠洲市の市民として、そして被災者としての視点をあわせ持つ竹下さん。刻々と変わる支援のニーズにいち早く気づき、対応されています。

奥能登の宿泊施設が不足し、ボランティアが活動できない状況の中、1月末からはご自身の家を開放してボランティア拠点として提供しているそうです。

珠洲市はまだ9割以上の世帯で水道が復旧しておらず(2024年3月25日時点)、仮設住宅の建設も追いついていません。1月から変わらず支援が必要な状況が続いており、避難者の方の精神的なお疲れが出ているような状況であると竹下さんは話します。

<竹下>「私自身も被災者なので、支援者と被災者の垣根を越えてできる活動や、被災者に寄り添った心身のフォローをしたいと思っています。引き続き必要な支援を続けていきます」

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▽竹下あづささんが立ち上げた「NOTOにじのひかり」のInstagram https://www.instagram.com/noto_nijinohikari/ 

●特定非営利活動法人YOU–I 【在留外国人震災支援事業】

20年前に発足し、在留外国人の方々が中心となって県内に住む外国人の方の地域での活躍、地域の国際化をサポートするNPO法人YOU-Iさん。
30カ国80名の外国人で組織され、通訳・翻訳を得意としていることから、発災直後にもスタッフのところに「どこに避難すればいい?」と問い合わせが相次いだそうです。

緊急時は日本人にとっても聞き慣れない言葉で情報が飛び交い、母国語が日本語ではない方にとっては命にかかわる問題。

YOU-Iさんは石川県と協働し、「令和6年能登半島地震/多言語相談窓口」を運営し、9言語で外国人向けの地震相談を行いました。

英語、ベトナム語、中国語、インドネシア語、タイ語、ミャンマー語、ポルトガル語、韓国語、フランス語で相談窓口を設置

1次避難が進んだ後も、在留外国人の方にとって困難は続きました。

<NPO法人YOU-I 山田さん(以下、山田)>「すべての情報が日本語でしか発信されず、在留外国人の方は支援物資がどこに届いているのか、水はどこでもらえるのかもわからない状況にあるとお困りの声が寄せられました。さいわい私達のもとには各国の大使館や全国のNPOから物資の支援が届いていましたので、能美市の協力企業の倉庫と物流をお借りして七尾市の倉庫まで運び入れ、そこから被災した外国人の方へ個別に配送する支援を現在も定期的に続けています」

今、震災で被災した多くの方が職を失い、就労の課題にぶつかっていますが、「技能実習生の場合は個別の難しさがある」と山田さんは話します。

<山田>「技能実習制度は、限られた職種で限られた作業しかできない在留資格です。これについては以前から問題があると訴えてきたのですが、今回の震災で職を失った実習生たちが今後自由に就職、転職できる制度が必要だと、1月4日に名古屋入国管理局に申し入れを行いました。その後、1月18日に名古屋入管の関係者と、各市の国際雇用担当者の方にお集まりいただき、現状説明と今後の対応について協議をし、同時に臨時の仕事相談会を実施。当日の運営や通訳と、被災した外国人への告知を行いました。」

このような活動を続ける中で各国の大使館とのつながりが新たに生まれ、安否確認の協力なども行なったほか、現在は各大使館が行う炊き出しの支援も行っています。

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▽NPO法人YOU-IさんのInstagram https://www.instagram.com/npoyoui/

●建築プロンティアネット北陸 【被災住家の所有者に対する建物相談】

最後の登壇団体は、建築プロンティアネット北陸さん。
熊本地震や佐賀豪雨をきっかけに九州で生まれた建築士の有志によるボランティア団体の北陸支部で、今回の能登半島地震を機に誕生しました。

報告会での様子

現地の支援団体からの要請を受け、住家の所有者さんと直接お会いしながら建物に関する相談を受ける活動を行っています。

<建築プロンティアネット・山本さん(以下、山本)>「活動を始めた2月は時期的には住家の応急危険度判定、いわゆる赤紙、黄紙が貼り終えられたタイミングです。『片付けに家に入りたいけれど赤紙が貼られたから入ってはいけないんじゃないか』とか、『赤紙が張ってあるからもう取り壊すしかないんだ』というような誤った認識が生まれていました。そのあたりをわかりやすく説明しながら、具体的に建物にどのような危険性があるのかをご説明しています」

活動の中で、建物の所有者の方には正しく怖がってもらうことを心がけていると、建築プロンティアネットの岡さんは話します。

<建築プロンティアネット・岡さん(以下、岡)>「実際に現場に行って家を見てみることでわかることはたくさんあります。ぱっと見はとても危なそうに見えるけれど、裏から家の中に入ってみると柱はしっかり残っていた、というケースもありました。どこが危険で、どこに気をつけなければならないかを理解してもらえればと思っています。必要に応じて応急処置をしたり、注意喚起を呼びかけるカラーコーンをお渡ししたり、危ないところを避けながら家財の片付けが進むようにお手伝いしています

依頼を受けて被災住家を訪問している様子

被災者の方からは「家に住み続けるにしても、解体するにしても、どのくらいお金がかかり、どんな補助制度を使えるかわからない」といった相談が多く寄せられるそう。

<岡>「罹災証明に書かれている被災度に応じて、助成金の仕組みや自治体・国からもらえるお金は大きく変わりますが、その制度はとても複雑で建築士にとっても難しいと感じるほどです。これをできる限りわかりやすくまとめたシートを作成して、皆さんにお配りすることもしています」

輪島市の門前から活動を始め、すでに30軒以上を回っている建築プロンティアネットさんに協力してくれる大工さんも徐々に増えてきたそうです。4月からは七尾市の高階地区にも活動エリアを広げようとされています。

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▽建築プロンティアネット北陸さんのInstagram https://www.instagram.com/pronteer_net/

前編の各団体活動報告はここまでです。

報告会では代表の団体にご報告をいただきましたが、それぞれの団体が個性的な活動をされていて、行政の支援が行き届かないような細かいニーズを拾い、団体の能力を活かしながら活動いただいていることを助成を出しながら常々感じています。

後編は、ほくりくみらい基金の代表理事の永井と、登壇団体とのクロストークの様子をお届けします。

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▽ほくりくみらい基金 「令和6年能登半島地震災害支援基金」について
https://saigai.site/home/07saigai/