レポート
Report
ほくみ能登助成
2025.5.29
【後編】「つづける支援活動助成」オープンふりかえり会 レポート

能登半島地震からの復旧活動の継続を支援する目的で立ち上がった「つづける支援活動助成」。発災から約1年までを助成期間の目処としていた本助成は、2025年1月末をもって事業期間が終了いたしました。
今回は、4月26日(土)にオンラインで行われた「『つづける支援活動助成』オープンふりかえり会 」の様子を「前編/後編」に分けてレポートいたします(「前編」はこちら)。
「後編」はテーマトーク!寄付者の皆さんが今一番聞きたいテーマや、これからどんな助成金があると助かるかなど、日々現場で奮闘する助成団体の皆様にうかがっていきます。

みんなが「今聞きたいテーマ」に投票! 一番多かったのは「能登支援の現状と課題」
テーマに沿って助成先団体の皆さんにお話をうかがう「テーマトーク」タイム!一つ目のトークテーマは下記の4つの中から、ZOOMの投票機能を用いて参加者の皆さんに選んでいただきました。

結果、一番投票数が多かったのは「能登支援の現状と課題」。やはり皆さん「今、どうなっているのか」が気になるようです。そこで実際に能登にお住まいの方々にお話をおうかがいしました。まずは能登町を拠点に、輪島塗レスキュー活動や食文化の伝承に取り組む「一般社団法人能登地震地域復興サポート」の船下さんから。
“能登の知恵”の流出が止まらないことへの危機感
「私たちは支援の中でも、『能登の食伝統をどう守るか』ということをテーマに活動してきています。もちろん人の命と暮らしが一番大事なのですが、その次の段階で、非常に重要なテーマになってくると思っています。
今危機感を感じているのは、人口が急激に減っていることです。家が住めなくなって、子が住む街へ引っ越したおばあちゃん達だったりと、いうなれば“能登の知恵の塊の流出”が止まらなくて。『食』は命を繋ぐものでもあると同時に、“能登のアイデンティティ”でもあると思うのです」


お次は、輪島市の三井地区を拠点に活動を展開する「のと復耕ラボ」の斉藤さんに、今感じている課題をうかがいました。
「これは震災前からの課題ではあったのですが、より顕在化しているのが『里山や森林、田畑の維持管理の問題』です。田んぼや用水はこれまで集落で管理してきていましたが、人が減って環境維持が難しくなってきています。
そしてもう一つは、輪島に長期滞在して支援してくれている方や、新たに能登に住もうとしてくれている方々の『住まいの確保』ですね。空き家はあってもなかなか話が進まず難しい。今、僕たちが『復旧』から『復興』に向けてまた新たにボランティアの方々を迎えようとする中で、ここが一つのネックになっています」

やはり顕在化しているのは「住まいの確保」の問題。被害を受けた住宅をどうするのか。住民にとっても、新たに能登にやってくる人達にとっても、悩ましい問題です。
「『能登の素敵なお家を残したい』って、多分皆さん思っていることだとは思うけれど、『公費解体してもらえるのは今だけ』という焦りもあるし、たとえ建物を残したとしても、どう経済的に維持できるのかが見なくて、袋小路に入っている印象はあります。そのあたり、フロントラインにいらっしゃる皆さんはどうお感じでしょうか?(ほくりくみらい基金:永井)」

「一人の決断」に委ねるのは、あまりにも“重い”
答えてくれたのは建築士によるボランティア団体「建築プロンティアネット北陸」の西さん。
「公費解体の期限は一旦延長されましたが、それでも輪島市なら6月中に最終判断をしなければなりません。けれど、“地域”として見た時に“一人一人の決断”だけに委ねるのは、あまりにも重いのではないか、ということも見えてきています。
僕たちは今輪島の深見地区を回っているのですが、一軒一軒の家も調査しながら、同時に“集落全体”としても調査しています。その中で『どういう可能性がありうるか』を考え、今度5月に会議をしようと思っているんです。集落で話し合えば、個人で抱えているだけでは出てこない解決策もあるかもしれないし、“即解体”しなくても良くなるかもしれない。そういう活動を、小さくても展開していこうと思っています」

「住民の意見集約」という “見えない仕事”の大切さ
そして発災直後から銭湯「あみだ湯」の営業を再開させ、珠洲におけるボランティア活動のハブ的ポジションを担っている「一般社団法人 仮かっこ」代表の新谷さんにも現状の課題をうかがいました。
「外部からの支援もとても大切だけれど、住人の意識の醸成やアクション促進が、やはり重要だと思っています。珠洲市の場合、大きく10地区ごとに復興計画を作っていくのですが、各地域の協議会設立や意見集約がなかなかに困難で。そもそもニ次避難されていたり、今どこにいるのわからない住人も多い中で、“名簿録”から作っていくような地道な作業が必要でー‥。皆さん自分の生活再建も大変な中で、どうやってその活動を支援していけるのか、課題だと感じています」

「こういった『地域の中での調整役』のような、『お金にならないけれど必要な仕事』って、たくさんあると思うんですね。そういった部分を若い世代に期待されて板挟みになったり負荷がかかったりしているという状況も生まれています。
そういったところも、例えば「人件費」としてサポートできると良いのかなと。もちろん行政からの支援員も派遣いただけるとは思いますが、行政主導でやると難しかったり目が届かない範囲も出てくると思います。そこをフォローできるような、ほくりくみらい基金さんのならでは視点があると良いですよね(新谷さん)」
「これからの能登」を担う子ども達の「考え・実行する力」
そして発災から1年以上が経過して懸念されている「子ども達への教育支援」に関して、子ども達の学習支援や遊び場の提供に取り組んでこられていた「のとルネ実行委員会」代表の山﨑さんにもお話をうかがいました。

「“能登のこれから”を担っていくのは子ども達です。だからこそ、これからの支援では『教育』がすごく重要なテーマになってくると思います。同時に、時間のかかることだとも感じています。しっかり自分で考えて、実行できる子ども達を育てて行かないと、もし今後同じような災害が起こった時に復興が進みません。だからこそ、いわゆる“お勉強”だけじゃなくて、遊びや体験を通して、知育・体育・食育を学べる場所が重要です。行政も含めて、みんなで取り組んでいかなければいけないと思います」

「つづける・つづける・つづける支援活動助成」になるまで
お次はテーマトークの二つ目のお題へ。「次はどんな助成プログラムがあると嬉しい? 今後の皆さんの活動継続に必要とされる支援は?」
助成金を実際に使ってみた感想や、これからどういう助成プログラムがあるといいかをうかがいました。早速手をあげてくださったのは、建築プロンティアネット北陸の西さん。
「つづける支援活動助成が終わってから、他の助成金に申請して活動しているのですが、これがなかなか難しく…。というのも、僕らの活動は、フェーズごとに変わっていくし、より進化させてていこうと思っています。なので申請時には気づかなかったことも後からどんどん増えてくるのですが、大抵の助成金は、申請した内容から少しでも外れると“経費対象外”になってしまうんですね。
なので、つづける支援活動助成がいかにありがたかったか、今身にしみて感じていので、是非とも『つづける・つづける・つづける支援活動助成』くらいになるまで(笑)、続けていっていただきたいですね」


助成期間終了の「その先」まで見ようとする眼差し
また「活動の途中でも経費の利用計画を変更できる」というのも特徴の一つだった「つづける支援活動助成」。「はぐネット」の高橋さんも、そのありがたみを感じたとお話しくださいました。
「服の陳列を、今まではダンボールを積み上げて何とかしていたんですが、さすがに限界を感じ、助成金を活用して工事を入れさせていただいたんです。そしたら今までの3倍くらい服を並べられるようになって!『量が見せられる』と商品の回転率もよくなって、結果リピートしてくださる方が増えました。その中でお客さんとの関係性が育めたと感じています。
助成金って、対象期間が終了したら『はい!ここまで!』っていうものが多いと思うのですが、ほくりくみらい基金さんは『その先のつづける』まで考えてくださっている感じがあって、その気持ちがすごく伝わってきました」


また、はぐネットさんは申請時から一部内容を変更し「洋服の回収ボックス」を制作し、地域ごとに設置して行かれました。
「発災から時間が経って、それぞれの生活が始まっていく中で、お店にくる能登の方に『今どんなことをしてほしい?』って聞いたら『忘れないでほしい』って皆おっしゃるんですね。だから回収ボックスは、洋服回収はもちろんなのですが、「地震の記憶が薄れないように」という、地域における役割も果たせないかと思っています」
教訓を活かして。平時から地域ごとの“活動拠点の目星”を!
もう少し時間があったので、トークテーマ投票で第2位だった「これまでの活動から見えてきた被災地団体の支援組織へ向けた教訓」についてお話を伺うことに。
まずは他県でのボランティア経験も多い「能登半島支援チーム」の新田さんから。

「私は発災後すぐに七尾に入って、ボランティアの拠点になりそうな場所を見にいきました。でも私は石川県を離れていた時期が長く、こちらのつながりがほとんどなかったので、拠点探しには苦労しました。
だから平時から、地域ごとに“活動拠点の目星”をいくつかつけておくことが大事だと思います。それで支援活動の初動が、かなり変わってくると思うんですよね。」

その「拠点の目星」とは、一旦どういう観点で選んだら良いのかをうかがうとー‥?
「東日本大震災の時も、熊本地震の時も、被害中心部の“一歩手前”に拠点を構えてきました。被災地に駆け付けられる距離でありながら、ボランティアさんの安全も確保しないといけない、だからこその“一歩手前”なのですが、どこが災害の中心地になるかなんて、起きてみるまでは知りようがありませんよね。だからこそ、どの地域でも、事前に候補地を考えておくことが重要なんです。(新田さん)」
全国各地に仲間がいることが、“究極の防災”
また、能登半島支援チームの皆さんは「他の県と繋がっている」ことが、そのスピード感や支援の的確さにつながっているように感じました。
「全国に仲間がいるということが、究極の防災だと私達は言っています。そのネットワークがあるから、必要な物資や支援をスピード感もって提供することができるんです。それに、今後いつどこで発災するかなんてわからない中で、今回の能登半島地震の支援も単発で終わらせるのではなく、SNSなどのグループをつくって個人単位でも共有できる仕組みを考えています」

いつ、どこで、災害が起きてもネットワークできるように
「他県からのノウハウを得て」という部分でも共通する、「建築プロンティアネット北陸」さんにもお話をうかがいました。
「建築プロンティアネットの元祖は、佐賀豪雨の際に九州の建築士達が立ち上げた団体です。僕らが助成金を申請するにも団体名が必要になる中、一から立ち上げていたら時間もかかるので名前をお借りして『北陸支部』としてスタートさせてもらいました。
今は僕らの活動もアーカイブとしてまとめて、次に災害が起きた時にも積極的に情報を提供していきたいと思っています。これから日本中どこで災害が起きても、現地の設計士さん達とネットワークしてボランティア活動を広げていけたらと」

災害ノウハウの共有は、重要なテーマ。そこで、今回もせっかく多種多様な支援団体の皆様にお集まりいただいたので、これを機に他団体さんに聞いてみたいことを尋ねたところ、手が挙がったのは「仮かっこ」の新谷さん。
「のと復興ラボさんと、何かやり取りしたいなと思いながらも、ほとんど交流できず。最近どうかな、とか近況をうかがえたら嬉しいです。(新谷さん)」
「そうですね、僕らは昨年2月から始めたボランティア活動も、一旦今年4月をもって終了しました。次は、里山里海にいろんな人達が関われる活動を展開していきたいと思っています。
子どもたちが森で遊べたり、玄人でなくても林業に関われたり、そこで採れた薪をエネルギーに使ったりー‥。あと、やっぱりチェーンソーなどの工具を使える人が増えると、災害からの復旧も早くなると思うのでそういった活動も。そもそも森林が守られると、災害自体を防ぐことにもつながりますし」

「そして、まずは何より自分たち自身が楽しめたらなと。今は週に1回『暮らしを楽しむ日』を設けていて、山菜採りに行ったり、森に行ったりしているんです。自分たちが楽しみながら実践することで、地域を耕していけたらいいなと思っています。(斉藤さん)」
互いのノウハウや知恵を共有し合って、さらにパワーアップ!

そして最後に、オープンふりかえり会に参加してくださっていた寄付者さんからも質問やコメントを募りました。
「震災後まだ一度も能登に行けてないので、今度社員と一緒にうかがいたいと考えています。何もできなかったとしても『観光』という支援の形もあるのかなと。なので『ここにいった方がいいよ』とか『ここには連絡した方がいいよ』などアドバイスあれば是非いただけたら」
さすがは地域のキーマン&プレーヤーの集まりとあって、「お宿は是非先月営業再開された『ふらっと』さんへ!」「お風呂は是非あみだ湯で!」「珠洲市で営業しているお店や観光情報がまとめられているサイトのリンク送りますね!」などなど、リコメンド情報が瞬時に…!!
ジャンルやカテゴリーを超えて連携しあうことで、もっともっと強くなれる。そんな希望と共に、皆さんの心温まる励ましに、何度も胸が熱くなった会でした。閉会後に自由に残れる「放課後タイム」でも、たくさんの有意義な意見交換ができました。ご参加いただいた皆様ありがとうございました!また何かご一緒できると嬉しいです。

(開催日:2025年4月26日)
ほくりくみらい基金の助成プログラムは、市民の皆さまからの寄付によって支えられています。
被災地で活動する市民活動団体に必要な資金と情報を届ける「能登とともに基金」には、毎月1,000円から、または都度3,000円から寄付ができます。
すべての被災者が災害を乗り越え元の生活に戻るために、被災者に寄り添い支援を届け続ける市民活動団体を、寄付という形で応援してください。
詳細は、「能登とともに基金」WEBサイトをご覧ください。