レポート
Report
ほくみ能登助成
2024.8.5
被災した家の廃材をアートに!「さいはて」被災地で人が集うように~ボランティア団体「NOTOにじのひかり」~
珠洲市で、被災した廃材を「価値あるもの」に活用したり、集まったボランティアの皆さんと新たな取り組みを始めようとしている方がいます。第4次緊急助成を受けたボランティア団体「NOTOにじのひかり」の竹下あづささんに、取り組みを伺いました。
――――今回助成を受けた、廃材活用プロジェクトについて教えてください
わたしが住む珠洲市三崎地区は、地震に加えて、津波被害もあり、多くの廃材が出ました。でも、「廃材はゴミじゃない」というメッセージを伝えたいです。被災した家はどんどん公費解体されていきますが、廃材が形を変えて価値あるものに変わったらいいなと思ったのがきっかけです。
一言で「廃材」といっても、この先手に入らないような立派な木材も多くあります。また、住民の心の拠り所となる場合もあります。そうした思いをくみ取り、廃材活用のモデルケースとして、現代美術作家さんと協力して、小屋を建てる試みを始めました。
――――畳が敷いてあり、窓もあって、結構広いですね!
はい。寝っ転がれますし、意外と広いので泊まれますよ。ボランティアの畳屋さんに協力していただきました。海の音も聞こえて、最高です。
雨上がり。海の先に、虹が出ていました
――――廃材活用をなぜ、思いついたのですか
4年前の2020年、珠洲市に移住しました。めっちゃ海が綺麗なのに、「ゴミ落ちてるやん…」と思って。海外から流れつくゴミも多かった。ゴミ拾いを個人で始めて、ついには、海ゴミを使った工作授業を地元の小学校でやるまでになりました。廃材が気になるのは、海ゴミが気になったのと、同じ意識からでした。
本当は今回、大きな梁や柱を使いたかったです。見た目にもインパクトありますし。ただし、重い(笑)。男手がたくさん必要ですが、なかなか人手を集めるのが大変でした。今後、小屋の周りのウッドデッキなどに活用する予定です。
――――地元住民の反応はどうですか
近所のおじいちゃんおばあちゃん、たくさん見にきました。珍しいので。
アートの力は、会話のきっかけとしても、大事だと思っています。「廃材でこんなことができるのか!」と驚く姿を見ると、やってよかったと思います。
小屋のまわりに、人が集まる場所になれるよう、今後も力を入れていきます。
――――竹下さんは神戸市出身で、阪神・淡路大震災でも被災しています。立ち上げたボランティア団体について聞かせてください
阪神・淡路大震災は小学1年生で被災し、避難も経験しました。ただ1年もすると、自宅周辺はかなり再建されていった印象があります。
一方で今住む珠洲市は、半年たっても変わらない場所も多い。
当初から、危機感があって、現状を発信してきました。
春ごろ、急に支援が少なくなった印象があり、ボランティア団体「NOTOにじのひかり」を設立しました。また震災前から自宅で運営していた拠点「さだまるビレッジ」を、ボランティア拠点としても使えるよう、整備しました。半島の先端で「さいはて珠洲」と呼んでいますが、ここから新しい時代の「村づくり」をしていきたいと思っています。
これまで累計約300人が、ボランティア参加しています。当初は避難所の炊き出しや物資支援もしていましたが、現在は、地元・三崎地区の地域の細かいニーズに応えることを、主にカバーしています。地域の人々が困っていることに対して、何かできることを見つけて行動しています。
震災から半年たつと、住民も支援者も疲れてくる時期。地域密着で、心の部分のフォローも心がけています。
――――金沢駅から車で2時間半かかる、半島でも先端の珠洲市に移住されたわけですが、珠洲の魅力は何でしょうか
昔、原付で日本1周して、住みたいところを探していました。珠洲は、海も山も豊かで循環していて、結果として、食料自給率はとても高い印象です。人間らしくいきていけると思い、移住して、家も買いました。
珠洲の強みは、自然とともにいきていること。震災がおきても、住む人の根本はかわっていないと思います。住む場所さえ作れれば、みなさん生命力は強いので、復活すると信じています。
自宅は、大きな家でなくていいと思うんです。この小屋も小さいですけど、大きな希望と安心を届けたいですね。
――――県外にいると、能登の情報量も減ってきた印象です。県外の人ができることはありますか
やはり、話を聞いたりネットで動画見るよりも、できれば現地を見て話して体験する方が、全然臨場感や感じるものが多いと思います。ボランティアできた人たちみなさん、「思っていたのと全然違う!」と衝撃を受ける人がすごく多い。
ぜひ、能登・珠洲に来ていただきたいです。現地に来て、人々と触れ合うことで、新たな発見があり、その後帰ってからそれぞれが体験したことを伝えてもらえれば、能登の力になると信じています。
行きたいがどこに行けばわからない方に対しては、「さだまるビレッジ」というボランティア拠点を運営していますので、お気軽にご連絡ください。
廃材を活用した場所作りに加え、ボランティア拠点でも多くの方がここを拠点に活動しています。自然とともにいきる珠洲の魅力を感じ、地域の絆を深める取り組みが、三崎地区で広がっていくことを期待しています。
「NOTOにじのひかり」のご紹介
NOTOにじのひかりInstagram:https://www.instagram.com/noto_nijinohikari/
さだまるビレッジURL:https://www.facebook.com/profile.php?id=100079687809279
執筆・写真: 森禎行
元大手新聞記者で、現在LINEヤフー株式会社勤務。
今回、LINEヤフーのプロボノ社員として、取材と執筆を担当しました。
能登には大学時代、何度も訪問したことがある思い出の場所で、今回のご縁を生かしたいと思っています。