レポート

Report

ほくみ能登助成

2024.12.12

被災者もボランティアも、お互いにできることをして助けあう〜能登半島支援チーム〜


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ほくりくみらい基金の「つづける支援活動助成」では、能登半島地震からの復旧活動を継続するための助成を実施しています。

採択団体の1つ「能登半島支援チーム」の活動の様子を紹介します。

能登半島支援チームは、主に「被災した家屋の家財出し」と「七尾市御祓地区のコミュニティづくり」に取り組まれています。

今回はコミュニティづくりの活動の一環で行われている炊き出しの様子と、家財出しの活動現場を取材しました。

 

七尾市御祓地区の活動現場へ!

まずは代表の新田響子さんと「御祓地区コミュニティセンター」で待ち合わせです。

ーこの日は雲ひとつない快晴。近くの一本杉通りでもマルシェを開催しており、人通りも多く賑わっていました!

七尾市の御祓地域づくり協議会が主催する被災者支援事業の一環で開催されている「御祓deカフェ」にて炊き出し支援を行います。

ー三重支援チーム楽笑さんとともに、三食丼を作ります。

「いつもは200食程度なんですが、今日は一本杉通りのマルシェと同日開催なので、いつも以上に人が来ると見込んで、300食作りました」

と語る能登半島支援チームの代表・新田さん。

メンバーの藤山さんとともに、活動の現場を案内していただきました。

能登半島支援チームのメンバー藤山さん(左)と代表の新田さん(右)

 

他県でのボランティア経験を元に、任意団体を新たに立ち上げ

「能登半島支援チーム」は今回の地震をきっかけに立ち上がった団体と伺いましたが、新田さんはどうしてこの団体を立ち上げることになったのでしょうか?

「元々は竹あかりの活動に取り組んでいました。その仲間が東日本大震災で被災地支援に入るとのことで、災害ボランティアはその時から始めました。2016年の熊本地震の時にも災害ボランティアに行って、今日も手伝ってくれている熊本支援チームの人たちとはその時からの縁です。他県での災害ボランティアの経験はあったのですが、今年、自分の住む石川県が被災地になりました

ボランティアのネームシールは共に活動する熊本支援チームからの提供を受けています

「どうしよう、と思っていたら、全国にいる竹あかりの仲間から「自分のところなんだから、次は自分のところでボランティアを受けれる番だよ」と言われて、能登半島支援チームを立ち上げたんです。どうやって団体を立ち上げたらいいかもよくわからなかったのすが、熊本支援チームからサポートを受けて団体をスムーズに立ち上げることが出来ました。」

そう語る新田さんは、フルリモートでのお仕事と子育てをしながら、1月の能登半島地震の発生以来、七尾市の御祓地区を拠点に全国各地から訪れるボランティアのコーディネーションを担ってきました。

 

のべ2500人のボランティアを全国から受け入れ

今回、つづける支援活動助成では、活動範囲を七尾市に絞っていますが、申請当時(2024年6月)はどのような状況だったのでしょうか。

「石川県七尾市御祓地区は、かつて商業地域として栄えていたこともあり、七尾市内の他地域と比べても古い建物がそのまま残っている地域です。耐震性が低いため「大規模半壊・中規模半壊」の判定を受けている被災家屋が多くあります」

発災当初の御祓地区の写真

「被災した家屋の内訳では、県のボランティアセンターでは対応していない倒壊しかけている家屋や蔵、住⺠が避難し誰も住んでいない空き家などが多く、独居の高齢者や後期高齢者の住⺠だけでは家の片付けや、家財出し、家屋の修繕が難しいという課題がありました。

被災した当時の状況から家の片付けや家財出しを進めることが出来ず、それによる精神的な疲弊や無力感を感じてふさぎ込む住⺠や、孤独や孤立を感じている方が多いという状況でした。」

能登半島支援チームの活動の様子

こうした状況を受け、能登半島支援チームでは、ほくりくみらい基金のつづける支援活動助成を申請。

助成金は、七尾市内のボランティア拠点の水光熱費、拠点に常駐するメンバーの日当、コミュニティ支援の消耗品費・食材費、家財出しの運搬に使う車のガソリン代などに使われています。

全国からのボランティアの受け入れは、ボランティア募集の情報サイト「activo」で募集を掲載し、受け入れを進めてきました。

毎晩状況を更新しているactivoの画面

これまででのべ2500人のボランティアを受け入れ、7〜8月の夏休み期間は1日に多い時で8軒、11月時点では1日1〜2軒程度の対応をしているとのこと。

取材当日も家財出しをしている現場があるとのことで、ご案内いただくことにしました。

案内いただいたお家は、全壊の判定がついた、一人暮らしの女性が住む一軒家。

所有者の方のご許可をいただき、活動の様子を取材させていただきました。

 

被災した家屋の家財出し現場へ

被災家屋の家財出しの現場へ。玄関には正月飾りが残っていました。

お家の中では、所有者さんと3名のボランティアさんが倒れた家具などを避けながら、家の中の片付けをしていました。

この日参加されているボランティアの方は、京都からの方、県内(金沢・小松)から、とのこと。どうして能登半島支援チームのボランティアに参加されたのか、伺いました。

「私は金沢から参加してます。地震の後、何か自分にできることがないかな、と思ってactivoをみていたんですが、専門知識もないしな…と思っていたところに能登半島支援チームさんの募集を見つけました。『初心者歓迎』って書いてあって、それならできるかもと思って応募しました

泊まるところもあり、遠方からのリピートも多いそう。金沢からのボランティアさんは5回目の参加とのことでした。

ボランティアのマッチングをしながら、新田さんも感じることがあったそうです。

「ボランティアのマッチングを始めるまで、”助ける側”と”助けられる側”ってイメージがあったんです。でも、家財出しをしてもらった人も、ボランティアの人にご飯を作ってくれたりするし、ボランティアの人の中には誰かと一緒にご飯食べたいから家財出しに来た、という人もいます。お互い様の精神で助け合いで進めている感じです」

衣類や食器、金属など分類しながら片付けを進めていきます

お家の中のものを片付けなくても公費解体はできることにはなっていますが、やはり家の中にものが残っている状態と、空の状態では、圧倒的に空の状態の方が早く進むそうです。

ボランティアを依頼される被災者の方はどのような状況なのか、藤山さんに伺いました。

「被災者の方も様々で、早く終わらせたい方もいれば、ゆっくり片付けたい方もいます。家の片付けは力がなくてもできるボランティアなんです。ボランティアと一緒に片付けをして、喋っていくうちに元気になっていく被災者さんもいますね」

被災された方にとっては大切な家族との思い出が詰まったものやお家。

自分ひとりでは片付けられなくても、誰かと一緒に話しながら片付けることで気持ちの整理ができる。そんなボランティアとの時間も、被災された方にとっては大事な時間ですね。

 

ボランティアがハブになったコミュニティづくり

「私たちが家財出しをしたお家の人から口コミで広がって依頼が来ることもあるんです。私たちをハブに、家財出しをした地域の方たち同士がつながることもありましたよ」

と、新田さん。

能登半島支援チームの皆さんが地域のハブになっている理由のひとつが、声掛けにありそうです。

家財出しの現場から戻る道すがら、藤山さんはこれまで家財出しをお手伝いしたお家の方に声をかけていました。

(藤山さん)「こんにちは〜、今日の夜、待ってますんで」

(住民の方)「おう、あんたらの顔みれて安心したわ、夜行くさけ、またあとでな」

御祓地区の方に声掛けをしていく藤山さん

今日の夜、何があるのか伺ってみると、

「感謝祭をするんですよ〜。ずっと活動拠点として使わせてもらっていた場所をクローズすることになったので、そこの人にお礼を伝える会を、私たちだけでなく、地域の人たちも招待してやるんです」

とのこと。

これまでも家財出しの現場の住民の方に自分たちのご飯を作ってもらったこともあったそう。

助ける/助けられるの関係性ではなく、お互いにできることをして、助けあう。

被災者が一方的に支援を受けるだけではないその関係性が、地域の方にとっても心地良いようです。

「能登半島支援チーム」とともに、住民同士がこの復旧期を乗り越えた仲間になっていくーーそんな支援活動が、御祓地区で生まれていました。

(2024年11月取材:ほくりくみらい基金・須田)

能登半島支援チーム

石川県七尾市白馬町32-37 徳サン工業 2階(拠点 兼 宿泊施設)

Instagram:https://www.instagram.com/noto_team/

<メディア掲載>

・若者結束 復興へ奔走  能登半島支援チーム 七尾に宿泊拠点 ボランティア募る(北陸中日新聞 2024/5/22)
https://www.chunichi.co.jp/article/902067

・「共に復興を目指す同志に」能登で災害ボランティアに取り組む地元出身女性に迫る(ほとせなニュース 2024/10/2)
https://www.hotosena.com/article/15366411