レポート

Report

能登地震

2024.8.4

「オール能登」の未来づくり 迅速な支援と中長期の成長サポートを担うコミュニティ財団の意義


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ほくりくみらい基金では、当財団や助成先団体の情報発信にあたり、プロボノの方にお力添えをいただいています。

今回はライターとしてプロボノに入ってくださった方に、能登半島地震発生後のほくりくみらい基金の動きについて取材をいただきました。

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能登半島地震で被災直後、被災者自身など様々な人や団体が支援活動を始めました。
その初動の動きを支えたのが、前年に設立された「ほくりくみらい基金」でした。

基金自体は、焦点があたることは少ないながらも、全国からの多くの寄付を効果的に活用・配分する意義があります。基金メンバーに取り組み状況を伺いました。

――――「ほくりくみらい基金(以下、ほくみ)」の、能登地震での活動を教えてください。

ほくみは、公益財団法人として、地域の課題解決へ活動する団体に助成するなど、カネ・ヒト・情報のよりよい循環を目指しています。

今回の能登半島地震では、支援団体を緊急期から復興期まで支える「令和6年能登半島地震 災害支援基金」を、発災翌日の1月2日に立ち上げました。全国から6000万円を超える寄付(2024年7月現在)をいただき、1月中旬から「緊急助成」をのべ59団体、「つづける支援活動助成」を11団体に助成を行いました。

――――多くの団体に助成していますが、「緊急助成」の特徴は何だったのでしょうか?

一つは、スピード感です。少しでも早く支援するため、申請後24時間以内に審査を実施し、採択の場合は口座情報をいただき次第、送金も当日か翌日に送るという迅速な対応を心がけました。

第1次の助成は1月12日0時、1団体あたりの助成上限20万円で公募を始めました。1時間足らずの0時56分に最初の物資支援の申請があり、明けた朝から理事がそれぞれオンラインで審査をし、その日に審査を完了しました。随時、申請がきますが、申請した日や翌日に審査を完了するよう、心がけました。支援団体から「ほくみさん、早い!」と驚かれたこともあります。

第1次緊急助成は公募開始から5日後の1/17に募集終了。1/21から第2次緊急助成の公募を開始しました。

個人レベルの活動や任意団体も多かったですが、「被災者の顔が見える」かどうかが、審査のポイントでした。被災者とつながっていて「この集落のこうした人が、困っている」と適切なニーズが把握できているか、ニーズとの紐づきが説明できるか確認しました。

もう一つは、地域をまたいだ支援です。地域の団体はその地域の情報には明るいですが、「オール能登」を目指し、被災地域だけではなく二次避難された地域も含めて、情報収集と共有を心がけたため、「他の団体の他の地域での活動の情報がわかるのが良かった」と助成先団体の方々にお言葉をいただきました。

また多くの人が能登に心寄せていたので、寄付も多く集まり、そうした支援したい方々の思いの「受け皿」にもなれたのではと思います。

――――支援のニーズは、どう変わりましたか

1月12日から開始した第1次助成では、炊き出しや物資支援の申請が多かったです。

1月21日からの第2次助成では、金沢市以南へ2次避難された方への支援の申請が多かったのが特徴でした。金沢などに2次避難されている方の食事が不十分で炊き出しが必要という申請のほか、子ども服や制服の物資支援や、子どもの居場所づくりなどの申請もありました。

2月実施の第3次助成では、私たち団体自身も、積極的に情報収集したり、申請団体とコミュニケーションをとったりました。引き続き、炊き出しの支援や、被災された方への相談窓口の設置、被災地域での瓦礫撤去などの申請がありました。

最後の第4次助成では、引き続き珠洲市での炊き出しという当初から変わらないテーマもある一方で、支援テーマは多様化し、人のつながりの場づくりや、ボランティア拠点の整備などフェーズが変わったことを感じました。

左から順にほくりくみらい基金の須田、道下、永井

――――悩んだことはありましたか?

人件費の申請は悩ましかったですね。必要性は感じつつ、一件20万円という少額でもあったので、緊急助成の期間は慎重に検討しました。

震災後に立ち上がったみなさんに、支援活動を続けてほしいという思いから、生活再建などを中長期的に支援する、1件最大300万円の「つづける支援活動助成」の公募を行いました。こちらでは人件費含めて、幅広い活動内容に助成しています。

この額でも、行政や他の助成金の支援額などからすると多くはないかもしれません。しかし、同じ県民として、顔のみえる市民のエンパワーメントに繋げられた意味は大きいと思います。

――――行政や民間の支援はほかにもあります。ほくみの特徴は?

私たちは「地域の目利き」と自負しています。
能登半島は面積も広く、災害時は様々なニーズがありました。県外から支援したい人からすると、「自分たちは石川・能登の状況はよくわからないが、ほくみさんなら、いろんな人と繋がってる。困ってるところに資金が行く」とお声がけいただきました。
「ほくみに相談すると、いろいろわかるよね、つながるよね」ともっといわれるよう、私たちを結節点として、地域の未来が作られていくことを目指します

図書館でノートパソコンを使っている男性

自動的に生成された説明

――――最近はSNSも発達し、直接支援することも可能ですがその点はどう思われますか?

確かに今回、地域の団体それぞれも寄付集めをして、個人口座への寄付を呼びかけている方もいらっしゃいました。

「直接、被災地や困っている人にお金を渡した方が早くて効率的では?」と思う方もいるでしょう。ただ、復興は長く、寄付を継続して呼びかけるには困難なこともあります。

また寄付する側としても、知らない人に送るのは躊躇してしまいます。

ほくみが災害支援基金を立ち上げたことで「被災地支援や復興を応援したい方の受け皿となり、気持ちを汲み取る」ことと、安心感を提供できたと思います。

今回の助成は、100%みなさまからの寄付が原資です。ただし、15%は私たち団体が、この基金を運営する費用としていただいています。寄付金の一部を中間支援団体が受け取るわけですが、中間支援団体が存在することで、より効果的にお金が現地に配分され、地域全体の支援がスムーズに行われたと思いますし、今後も目指します。

――――まだできてないことはありますか?

障害者や外国人など、ほとんど申請されないテーマがありました。

「本当に困ってる人たち」は、まだいるのではと思っています。見えない課題を掘り起こす、そしてその課題解決を目指す団体に助成していくことにも取り組みたいですね。

「地域の受け皿」を目指す団体として、助成という方法以外のサポートを、組織を強くして実施していきたい。そもそも、財団のミッションの一つとして「仲間づくりのプラットフォームになる」を掲げています。「他の団体さん、こういう工夫してるよ」など、助成先団体の成長に繋がるサポートを心がけていますが、その機能を強めていきたいですね。

――――今後の「ほくみ」の活動を教えてください

今後も引き続き、地域のニーズに応じた柔軟な支援活動を続けていきたいと思います。

今年の秋以降、災害支援に取り組む団体さん向けに、災害支援に必要な知識をお伝えしたり、団体運営について考える講座を実施する予定です。助成先の団体同士が交流する場作りもしていきたいと思っています。

昨年、震災前に実施していた市民活動団体向けの講座「ほくみの学校」の様子

地域の市民活動団体さんにとっても、地元のコミュニティ財団と関わりをもつことで、資金面だけでなく、非資金面でも地域の人たちに自分たちの活動を支えてもらい、成長する経験を得てもらえたら嬉しいです。

市民活動に取り組む団体同士が情報交換をする横のつながりづくりにも取り組んでいます。

――――最後に伝えたいメッセージがあれば、よろしくお願いいたします

大変なことも多いですが、助成やサポートを通して、団体や人が変わっていくさまが実感できるのが醍醐味です

ぜひ、みなさんができる方法で応援していただきたいです。SNSでの情報シェア、寄付ができる方は寄付の支援をよろしくお願いいたします。

また、ほくみのスタッフとして同じ醍醐味を味わいたい方は、ぜひ仲間になってくれたら嬉しいです!私たちは、「未来はつくれる!」と誰もが思える社会の実現を目指しています。私たちと一緒に、地域の未来を創っていきませんか?

撮影時のオフショット。「どうやって持つ?」とワイワイ相談しながらの撮影でした。

 

ほくりくみらい基金の活動は、地域全体の支援体制を強め、災害時や日常の中で困っている人々に対して、的確かつ迅速に支援を届けるために不可欠です。

その役割を発信し、支援の輪を広げていくことが、地域の持続的な発展に繋がります。皆さんのご支援とご協力を、よろしくお願いします。

執筆・写真: 森禎行
元大手新聞記者で、現在LINEヤフー株式会社勤務。
今回、LINEヤフーのプロボノ社員として、取材と執筆を担当しました。
能登には大学時代、何度も訪問したことがある思い出の場所で、今回のご縁を生かしたいと思っています。