レポート
Report
活動報告
2025.12.22
「ほくみとほくほくほうこくの会 2025」レポート
ほくりくみらい基金は寄付者・市民の皆様の声でつくられている団体です。だからこそ活動も「やりっぱなし」にはせず、皆様にきちんとお伝えする機会を設け、 “開いていくこと”にも力を入れています。
今年もあっという間に師走を迎えました…!そこで2025年のほくりくみらい基金の活動をご報告する年次活動報告会「ほくみと ほくほく ほうこくの会」(略して「ほほほの会」! )を、12月1日にオンラインで開催しました。盛りだくさんの内容で走り抜いた1年間の活動の振り返りから、助成先団体さんの活動報告、そして来年への抱負まで。年次活動報告会の様子をレポートいたします。

コメンテーターとしてゲストにもご参加いただきました!
今年の年次活動報告会ではゲストとして松本 裕也さんにご参加いただきました。松本さんは東日本大震災を機にヤフーの復興支援事業の担当者として石巻入りして以来、宮城県を拠点に復興活動に携わり続けているお一人です。
能登地震においても、LINEヤフーの取り組みとしてプロボノマッチング事業である「プロボ能登」の立ち上げにも携わっておられます。何事にも先達はあらまほしきことなり、ということで長年復興支援に関わってきた松本さんにコメントをいただきながら今回は進行して参ります!

2024年と何が変わった?
“外部の人の支援”から“地元の人の挑戦”に
まずは、ほくりくみらい基金代表理事・永井から、今年一年の所感を共有しました。
「“復旧”することで手一杯だった2024年に対して、2025年は能登半島地震における“復興元年”といわれた年でした。けれど、それって具体的にどういう状態を指すのだろうと。インフラ整備が進むこと?災害復興住宅が建ち始めること?それともまちづくり協議会が立ち上がることー‥?その定義はそれぞれの立場によって色々あると思います。
私達 ほくりくみらい基金は、発足以来一貫して『挑戦する地域の人を応援する』ということを続けてきました。その視点から今年の変化を挙げるなら、これまでは“外部の人達”による支援が多かった状況から、“地域の人達” 自らがそれぞれに挑戦し始めた、ということだったのではないかと思っています」

“分かりやすいニーズへの助成”から、
“将来を見据えながら役割に応じた助成”へ
「物や人手、とにかく何もかもが足りない状況だった2024年は、ある意味“分かりやすいニーズ”に対して助成を行ってきました。けれど2025年は“地域の将来”を見据えながら、それぞれの“団体さんの役割”に側した助成を行っていくということが、重要になると私たちは考えてきました。
今年は“復興元年”ということで、様々なところから能登にたくさんのお金が入ってきた年でもあります。その中でほくりくみらい基金が助成できた金額は決して“大きい”とはいえないかもしれません。だからこそ私たちは『お金以外の支援』にも注力してきました。そしてその『お金以外の支援』の必要性は、発災以来私たち自身が痛感していることでもあります。
能登に残った“能登の人たち”と、能登から出た“能登の人たち”をいかに繋ぐか、どうやったら“能登の人たち”自身の背中を後押しできるかー‥。そういったことも含めて、県域財団としてできることを模索してきた1年だったように思います。(永井)」

復旧期から復興期へ。未来を分ける“分岐点”
永井の所感を受けて「復旧期から復興期へ移ろうフェーズって、“分岐点”でもあると思うんです」と松本さん。
「東北でも復興に向かうタイミングで、お金が大量に注入された期間がありました。けれど『ただお金を渡す』だけじゃなくて、『地域の人々が“主体者”になれる支援をできていたか』ということがその後の地域の大きな分かれ道になったと、東北の事例を見ていても感じています。そういう意味でも、今能登はまさにその岐路にあるのだと思います」
今が能登にとっての“正念場”であるということは、現場に携わる中でひしひしと皆感じていたことでもあり、理事一同深く頷きながら松本さんの言葉に耳を傾けていました。

ほくりくみらい基金 2025年の活動報告
つづいて、ほくりくみらい基金の今年度の実際の活動報告。寄付総額や、助成総額をご報告いたしました。今年はのべ465人の方から、総額27,024,597円のご寄付をいただきました!寄付者の皆様にはこの場をお借りして改めて御礼申し上げます…!



“自身の困り事”だけでなく
“周囲の困り事”にも目が向けられるように
助成事例を紹介しながら「発災から1年以上が経って、少しずつ“自身の困り事”だけじゃなく、“周囲の困り事”にも目が向いてきた時期だったように思います」と永井。
地震後の荒れたビーチの清掃や、ストップしていた成人式のお祝いの会など、地域の人々が協力しあって身近な“公”をより良いものにしていこうという姿勢が各所で見られた一年でした。


“資金”と“仲間”をつくるスキームづくり
また、助成するだけでなく、“資金”と“仲間”を集めるためのスキームづくりとして、今年新たに始動した2つのプロジェクトもご紹介。
一つ目は、休眠預金等活用事業「里山里海で多様な担い手がつながる能登の未来づくり事業」。
「住民エンパワーメントとネットワーキングによる創造的復興」をテーマとして、公募前に事前研修やネットワーキングも実施しました。採択後も伴走支援面談や研修を行いながら、2028年2月まで事業を進めていきます

二つ目は、プロジェクト応援寄付の仕組みづくり。こちらはいわゆる“クラウドファンディング”の形式で、活動団体自らの資金調達や仲間集めを後押しするしくみができました!(こちらからご覧いただけます)


「私たちがこれまで助成してきた団体さんが、それぞれにまた支援の輪を広げていけるような、“支援が支援に繋がるエコシステム”をつくることができないかと考えました。団体さんが繋がり合うことで、大きなうねりを生み出して行くことができると思うんですよね(永井)」
「今までどこにいたの!」という逸材を見出す“醍醐味”
一通りの活動報告を受けて、松本さんからコメントをいただきました。
「“地域の中心になる存在をどうつくっていくか”ということは、震災以前から能登に元々あった課題だと思います。ほくりくみらい基金さんの活動は、そこに意識的に取り組んでいらっしゃる印象を総じて受けました」と松本さん。「ちなみに、地域のプレーヤーになりうる人材って、手応えとして今どんな状況ですか?」と続けて質問もいただきました。
「まだまだ足りないといえば足りないのですが、潜在的に“たくさんいらっしゃる”という手応えは確かに感じています」と永井。

「団体を立ち上げて今では力強くプロジェクトを進められていらっしゃる方も、元々はふらりとほくみの相談窓口にいらっしゃった方なんです。相談する先がなくて“一歩を踏み出せていないだけの人”がかなりいる、というのが私たちの実感です。私たちが窓口を開いて募集すると『あなた今までどこにいたの!』と言いたくなる方にお目にかかれるのですが、そういった瞬間はコミュニティ財団を運営する者の醍醐味ですよね(永井)」

「コミュニティ財団が石川にあること自体が“希望”」
「そういう意味では“コミュニティ財団が石川にある”ということ自体が一つの希望ですよね」と松本さん。
「いわゆる経済合理性では測れないような活動が、石巻では今すごく重要な活動として育ってきています。だからこそ、合理性やお金では換算できない活動こそ大切に続けていっていただきたいですね。
東日本大震災の発災当時、東北にはまだコミュニティ財団はなかったけれど、石川にはある。そのこと自体が一つの希望なのではないかと、僕は思っています。(松本)」

活動現場から、助成先団体さんの声
ここで、助成先団体の中からニ団体の代表にもご参加いただきました。実際の活動を通しての感触やリアルな現場の声をうかがいます。まずは珠洲市の「Re Keisoudo project」の和田実日子さん。


地元の土に触れながら
手を動かすことで和んでいくもの
珪藻土は珠洲市の特産品であり、「Re Keisoudo project」では売り物にならず破棄される七輪などをアップサイクルしたプロダクトを制作しています。地震以前の2022年から和田さんがライフワークとして続けてきた活動ですが、地震を受けて「珠洲の人の心のケアに繋げられないか」と考えるようになったことから、ほくりくみらい基金の助成に応募をいただきました。

また、ワークショップは珠洲市だけでなく、金沢でも開催されています。
「住まいや仕事、子育ての都合で珠洲を離れた人はたくさんいて、私自身現在白山市に広域避難しています。“珠洲”とのつながりが薄れていく中で、金沢にいながら珠洲に想いを馳せられないかと考えました(和田さん)」
ワークショップから派生して茶話会も開催。「最初は皆さん少し緊張されていました、手を動かすことによって段々と空気が和んでいって、茶話会ではリラックスした雰囲気でお話されていました」
地元の素材を用いたワークショップが、皆さんの心を緩めていく作用があったようです。

“解決策”を提示するより、
たくさんの“選択肢”を渡すように
お次は、「建築プロンティアネット北陸」さん。能登半島地震を受けて、県内で活動する建築士の有志が立ち上げた団体です。個別訪問などを通して、建物に関する悩み事や相談を建築士が聞き続けてきました。
「何か一つの“解決策を提示する”というよりも、なるべくたくさんの選択肢を伝えて“考える材料をお渡しして帰る”ということを心がけています」と話すのは代表の一人・山本周さん。

“個人”では身動きが取れない課題も、
“集落”という視点なら解けるかもしれない
また、2025年は「個人の住宅」から少し視点を広げた「集落」という単位での相談会にも力を入れてきた経緯についてもお話いただきました。
「“個人”の相談にのる個別訪問も大切なのですが、金銭的な問題や親族間の課題など、様々な条件が絡む会う中で“個人”では身動きが取れなくなってしまうことがあります。そこに “集落”という少しだけマクロな視点から見ることで解決の可能性が広がるのではないかと。例えば『集落に残りたいけれど家がない』という人と、『空き家を所有している人』をマッチングしたりする活動をしていました(山本さん)」

「僕らのような外から来た人間が話を聞くことは、“地域のアイデンティティ”を振り返るきかっけになっているようにも思う」と語る山本さん。
背負いすぎず、続けていくことの大切さ
ここで、ニ団体の活動に対して松本さんからコメントいただきました。
「福島には未だに帰還困難地域があり、“離れている地域の人々をどう繋ぐか” が大きなテーマになっています。
活動が続いているところでは徐々に人が戻ってきている地域もありますし、キーマンがいる地域には地域の外からも人が関わってきて賑わいが生まれています。けれど同時に人の関係性というのは繊細なもので、活動をやめてしまった途端に途切れてしまったりもするものです。
だからといって活動する側がそんな重たいものを背負ってしまうと続かないので(笑)、“できることをできる人が続けていく”ということが大切なのだと思います。(松本)」

「能登の経験」は、他の地域でも生きていく
「建築プロンティア北陸さんは、必要なタイミングで必要な支援をされていて、すごく住民の皆さんの力になる活動ですよね。
先行して九州などで活動していた『建築プロンティア』さんからノウハウを学びながら活動を展開されてきたように、今回の能登半島地震で皆さんが積み重ねてこられた“能登の経験”は、日本各地で災害が頻発している中で確実に生かされていくと思います。(松本)」

2026年も、もっと巻き込んで&巻き込まれて!
活動報告会もいよいよ終盤。今年一年の活動を通して見えてきた課題や、来年への抱負をまとめました。


様々な課題が見えてきた中でも、特に永井が強調していたのが県域財団としての「県内人材の巻き込み」。
「県外からたくさんの人が支援に入っているのに、同じ県内の都市である“金沢の人の支援”はなぜ少ないのか、というお声をいただくこともありました。同じ県民として、私たちはもっと金沢以南の人々を巻き込むべきだし、私たち自身もっと巻き込まれるべきだと思っています(永井)」

来年もみなさんの“声”に寄り添って
「やってよかった!」の後押しを
「これからもほくりくみらい基金は“人”にフォーカスして、何より皆さんが楽しみながら学び合い『やってよかった!』と思えることを後押しをしていきたい。地域課題もこれから色々と変わってくる中で、その都度寄り添いながら、様々なプログラムを展開していけたらいいなと思っています(永井)」
最後に皆さんには「ブレイクアウトルーム」にて、来年のほくりくみらい基金に期待することなどをお話いただきました。

これにてオンライン年次報告会のプログラムは終了。次年度もほくりくみらい基金は皆さまの声に耳を傾けながら活動を展開して参りたいと思います。
2026年も、ほくりくみらい基金をどうぞよろしくお願いいたします!
(開催日:2025年12月1日)