レポート

Report

ほくみ能登助成

2024.8.8

二次避難者に寄り添う 独自の体制で届ける温かいサポート~避難者・被災者支援サポートボランティア「ひなさぽ」~


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今回の震災の特徴のひとつに、被災地域を離れて2次避難する人が多くいることが挙げられます。その二次避難者をサポートすることをきっかけに立ち上がったボランティア団体が「ひなさぽ」です。

被災者自身の思いから自発的に立ち上がった団体で、ユニークな運営体制で今も支援を続けています。メンバーの中村典子さんにお話を伺いました。

――――「ひなさぽ」はどのようにして始まりましたか?

ひなさぽの代表である小家(こいえ)は、珠洲市で被災し、市指定の避難所への避難を経て、加賀市に2次避難しました。小家の呼びかけのもと、県内外の有志があつまり、運営システムを構築していったボランティア団体です。

最初の活動のきっかけは、加賀市の2次避難先の宿泊施設を、3月に退去しなければならないという話があがったことでした。ホテルのロビーで「相談窓口」を自主的に開いたら、たくさんの困りごとを抱えた方が相談にこられました。そこで、複数の2次避難先にかけ合い、相談窓口を開設し始めました。

Facebookページ「ひなさぽ ぷらっとほーむ」より

―――― 具体的には、どんな活動を行っていたのでしょうか?

目の前にいる人は、困りごとや不安がたくさんある状態でした。メンバーは専門家ではありませんが、「相談窓口」を通して、必要に応じて専門家に電話をつないだり、必要と思う情報を共有したりしました。そうして始まった避難者の声に耳を傾ける活動は、今も続いています。

組織としては、SNSを通じてボランティアが集まりました。ほくりくみらい基金さんの助成は、2月下旬に申請し、4日後に採択されました。交通費やモバイルプリンターの購入、デザイン費用などに使わせていただきました。

相談に乗るひなさぽ代表の小家さん。Facebookページ「ひなさぽ ぷらっとほーむ」より

――――活動を継続するために工夫したことはありますか?

加賀市と違い金沢市では、2次避難所になっている宿泊施設が分散しており、また旅行での宿泊者も多いため、相談窓口を開設するのが難しい施設もありました。

そんな中行き着いた一つの方法が、金沢市社会福祉協議会さんが主催する避難者向けの交流の場「あつまらんけ~のと!」での、相談窓口開設です。現在は石川県社会福祉士会さんをサポートしながら、避難者さんのお困りごとなどをお聞きし、必要に応じて社会福祉士さんに繋ぐ形をとっています。

7月現在、ホテルと「あつまらんけ~のと!」での相談窓口が、主な活動内容です。

冷蔵庫に貼られたポスター

中程度の精度で自動的に生成された説明

――――2次避難者には、どのような課題がありますか?

みなさん「先が見えない不安」が、ずっとあると思います。将来を考えたいけど、考えられない人もいます。「どうにもならない」と諦めつつある方も出てきていますね。

また相談窓口が設置されていても、「どこにどう電話していいのかわからん」という方もいらっしゃいます。高齢者にも寄り添った対応が大事です。耳が遠い高齢者にとっては、電話相談ですら、大きな壁となることもあります。「大変だね」で終わるのではなく、丁寧に話を聞いて、一緒に動く時間をもつことが大事だと思っています。電話での問い合わせを一緒にするといったサポートもしています。

――――情報発信にも力を入れていると伺いました

被災者が知っておくべきだけど、あまり知られていないこと、お知らせが必要と感じた大切なことを、Facebookページ「ひなさぽ ぷらっとほーむ」を中心に、メンバー目線で、今後も発信していく予定です。

Facebookページ「ひなさぽ ぷらっとほーむ」より

ちょうど「あつまらんけ~のと!」が始まりました。

「相談窓口」にはさっそく、「家電がほしいが、どこに問い合わせればいいかわからない」という被災者が訪ねてこられ、「ひなさぽ」メンバーが電話で問い合わせをしていました。

「あつまらんけ~のと!」では、自治体職員も参加した個別相談会も開かれていました。自治体への相談を躊躇されている方がいらっしゃれば、相談しやすいように付き添うなど、直接繋げる支援もしています。

――――組織体制がユニークと聞きました。どのような体制ですか?

メンバーは30人ぐらいで、「やりたい人がやりたいことをやる」のが特徴です。

「ホラクラシー組織」といいますが、ピラミッド型の上下関係でなく、「役割」によってつながり、メンバーが自律的に役割と責任をもちます。自分のやりたい役割を宣言し、それに基づいて活動します。しばらく休みます、といった「お休み宣言」もできます。

ひなさぽメンバーがコミュニケーションツールとして使っているツール・Discord(ディスコード)にもコンセプトや運営方針が示されています。

――――今後の課題について教えてください

避難者一人ひとり状況は異なり、多様です。

支援する人みんなで、その多様性に対応していく事が大きな課題としてあります。またお一人お一人お悩みが違い、支援方法も違います。ひなさぽでは今後も被災者に寄り添った支援を続けていきたいです。

相談せず一人で悩みを抱えていたり、ご本人にも課題が見えなくなっている方もいらっしゃいます。

何気ないお話や雑談がとても大切で、お話しするうちに大きなお悩みがポロリと出てきたり、大切な申請が漏れていた、ということも数多くありました。本当に「一人ひとり違うんだな」と思います。

――――印象に残っている支援エピソードはありますか?

お一人で避難されていた高齢の方が、はじめは「寂しい、寂しい」とずっとおっしゃっていました。

相談サポートをして、能登に戻ることができました。後日、ひなさぽのメンバーが能登に行くことになったので「どうしているかな」と連絡をとったら、「友達に誘われてイベントに行くから、ちょっと今日は駄目なのー」と断られました。お会いできなかったのは残念だったのですが、それがとても嬉しかったんです。

新しい繋がりが出来たり、以前の繋がりが戻って被災した方が新しい生活に適応していく姿を見ることができるのは、本当に嬉しいです。

団体のミッションは「笑顔のたねまきサポート」。そんなお手伝いができたかなと思いました。

――――ひなさぽの今後について教えてください

これからも被災者の声に耳を傾け、支援を続けていきたいと思います。

横に繋がり、やれる人がやれる事を展開していけるひなさぽの仕組みは、被災された方の多様な課題に対応できるのではと考えています。支援の輪を広げ、多くの人々が笑顔で過ごせるような、能登・石川を目指していきたいです。

ひなさぽは、最初の立ち上がりは避難者自身が立ち上げたボランティア団体でしたが、メンバーが増えていく中で、能登にゆかりのある方や関心のある方たちが参画してくださっています。そして、ユニークな組織体制のもと、二次避難者や被災者の支援に取り組んでいます。

多くの避難者が新しい生活に適応し、前向きに過ごしていくため、これからも一人ひとりの被災者の声に耳を傾け、支援活動を続けていくひなさぽの活動に注目が集まります。

「ひなさぽ」のご紹介
Facebookページ「ひなさぽ ぷらっとほーむ」URL:https://www.facebook.com/hinasapo

執筆・写真: 森禎行
元大手新聞記者で、現在LINEヤフー株式会社勤務。
今回、LINEヤフーのプロボノ社員として、取材と執筆を担当しました。
能登には大学時代、何度も訪問したことがある思い出の場所で、今回のご縁を生かしたいと思っています。